桶を貸せと呼ぶ船幽霊
どんな伝承か
夕陽が色褪せ、大海原が暗くなり始める頃、沖の方からホーイホーイとこちらに呼びかける声が聞こえ、灯がちらちらと見える。夜になりかける大洋のただ中でこんな目に遭うと、逞しい漁師たちも顔色を変えて逃げ支度をする。やがて桶を貸してくれという無気味な声がすると、もうれん船だ、亡霊船だと囁き合い、釣り仕舞もそこそこに櫓櫂を漕ぎだす。静かだった海がうねりはじめ、霧が立ちこめて、海霧の向こうにうっすらと船の形が見える。とても逃げきれないとなったときは、アカ桶の底を抜いて投げてやる。そうしないと海水をかけられて船が沈むか、暗礁に乗り上げて難破するといい、今でも漁村の老人は信じている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
宮城県史 民俗編(宮城県史シリーズ・昭和中期(推定1960-1970年代))
宮城の民間信仰と禁忌(宮城県史民俗編)/禁忌を破る祟りと火玉/河童・狐狸の怪/年中行事と俗信/地域の幽霊・妖怪伝承