花園神社で秋に咲いた八重桜
どんな伝承か
昭和三年十月、御大典の年に東京四谷花園町の花園神社で、季節外れの花が咲いた。神社ではそのころ富士山をかたどった築山を造って浅間神社を祀り、その折に八重桜を一本植えたが、この桜が秋風の中でつぼみをふくらませ、枝先にぽつぽつと花を開かせて春のような姿を見せたのである。木花開耶姫を祀る所であり、御大典のめでたい年でもあるので、まことにありがたい瑞祥だと神主は大喜びし、講中の人々もこぞってこの奇瑞をたたえ、木の根元に注連縄を張りめぐらせて神木としてあがめたという。
原典より
東京四谷花園町の花園神社では、その頃富士のお山をかたどった築山をつくり、浅間神社をまつったが、その際植えた一樹の八重桜は、不思議にも秋風に蕾がふくらみ、枝頭点々と花をほころばせ、春のおもかげをしのばせているのであった。—— 日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。