地中海で戦死した夫が泣いて現れた夢
どんな伝承か
大正六年六月、地中海で行動中の駆逐艦榊は、十一日にドイツ潜航艇を発見して攻撃奮戦中、敵の魚雷を受けて撃沈の悲運に遭い、艦長上原少佐をはじめ機関少佐竹垣純信三十七歳ほか多くの将士が戦死した。その竹垣少佐が無念の戦死を遂げた夜、祖国にあった夫人の夢に少佐の姿が現れたという。当時、佐世保市元町の添島氏方に仮寓していた竹垣くり子夫人は、新聞記者に、夫は出発前のある夜、酔い覚めの水を呼んだ際にこれが末期の水だと戯談を言ったがそれが真実の末期の水となった、ちょうど十二日の夜、場所も土地も分からぬまま夫が霜降りの背広を着て泣いている妙な夢を見た、と語っている。
原典より
その竹垣少佐が無念の戦死をとげた、その夜、祖国にあった夫人の夢に、不思議な少佐の姿があらわれたのであった。—— 日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。