馬ごと荷馬車を巻き上げた熊味のつむじ風
どんな伝承か
大正十年のある日の午後四時二十分ごろ、愛知県西尾町の字熊味にある久麻久神社のあたりで、突然大きなつむじ風が巻き起こった。つむじ風は岡崎街道沿いに道光寺や鶴城などの土地を吹き抜け、三十分ほどでおさまったが、その途中で荷馬車が馬をつけたまま空中へ巻き上げられるという珍事を起こした。通り道の村々では全壊した家が二棟半、半壊が三十二棟、倒れた電柱が十数本にのぼり、屋根瓦を飛ばされた家は数え切れなかった。幸い、死んだり怪我をしたりした人は一人もいなかったという。
原典より
この大旋風は、岡崎街道を、道光寺、鶴城その他の、各地を通過して、吹きまくり、およそ三十分ののち止んだが、その際、荷馬車が馬のついたまま、空中へ捲き上げられるという大珍事を起した。—— 日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。