踊りに乗じて馬を借りた男
どんな伝承か
馬に乗れる男に馬がなかった。ある日、近所の馬持ちの家へ出かけ、門口から『ええじゃないか、なんでもええじゃないか』と勢いよく踊り込んだ。主人は驚いたが、つられて踊らねばならず、『馬貸してくれてもええじゃないか』『貸してあげてもええじゃないか』と泣きながら歌って踊るはめになった。男はすばやく馬を曳き出して飛び乗り、踊の渦の周りを蹄の音を立てて回り、踵で馬の腹をどんどん叩いた。災難なのは馬で、叩かれるたびに身慄いし、馬持ちはお蔭で馬の臭い下痢に数日悩まされたという。海部郡由岐町の話。
原典より
で、或日のこと近所の馬持ちの家へ出かけて行つて、門口から—— 阿波えゝぢやないか(山口吉一・民俗・幕末世相史・1931年(昭和6年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
阿波えゝぢやないか(山口吉一・民俗・幕末世相史・1931年(昭和6年))
『阿波えゝぢやないか』は、山口吉一が一九三一年に著した、幕末の「ええぢゃないか」騒動の記録である。慶応三年の暮れに阿波で起きたお札降りと踊りの騒ぎを、県内の古老五十余人からの聞き書きと郡村史誌などの記録によって、起因・神異・服装・歌謡・禁忌などの面からたどる。徳島日々新報への連載をまとめたもので、概観篇・詳述篇・挿話篇・補遺篇から成り、鳥居龍蔵の序、話者の古老の一覧、太田明の「御下り踊私考」を付す。