お宮谷から母を呼ぶ娘の声
どんな伝承か
由岐の阿部に、貧しい母と娘お宮の二人暮らしの家があった。祭りの前夜、母はせめて米の飯を食べさせたいと隣家の米を盗んで炊いてやったが、喜んだお宮が友達に話したことからうわさが広まり、母は村人から白い目で見られるようになった。思い詰めた母はお宮を連れ、今の学校の横を流れる谷の奥へ行き、淵に臨む大岩の上から娘を突き落とした。その後、雨模様の日に岩のそばを通ると、谷から母を呼ぶ女の子の悲しげな声が聞こえるといい、谷はお宮谷と呼ばれるようになった。
原典より
それからのち、雨もよいの日など、この岩の傍を通ると、谷の方から「おかあさあん、おかあさん・・・・・・」と世にも悲しげな女の子の声が聞こえて来るといい、…—— 阿波の怪談(横山春陽・郷土怪談・民俗・1958年(昭和33年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
阿波の怪談(横山春陽・郷土怪談・民俗・1958年(昭和33年))
『阿波の怪談』は、横山春陽が昭和三十三年に編み、徳島新聞出版部から発行した郷土の怪談集である。徳島県の各地と土佐との国境の山中に伝わる山女郎、淵や池の主、カッパ、亡霊、火の玉、タヌキやキツネ、大ジャの話を、平安朝の言い伝えから藩政期、明治・大正、昭和の出来事まで、編者が古老に聞き、書物から拾って題ごとに並べる。おわりにでカッパやヘビの話の多い地域や海の話の少なさについて記す。