盆の夜の白い船と青い老婆
どんな伝承か
県南の漁村では盆に無縁仏を祭って漁を休む習いがある。明治の初めごろ、日和佐の変わり者次郎太は、盆の月夜にひとり小舟で夜釣りに出た。すると沖から真っ白な大船が飛ぶように迫り、ぶつかったと思った瞬間、何事もなく舟を通り抜けていった。逃げ帰ろうとすると舟が動かず、緑青のような青い顔の老婆が舟べりにすがって水をくれと言う。燃えさしで殴りつけて逃げ帰った次郎太は寝込み、七日後、老婆と同じ青い顔で死んでいるのが見つかったという。
原典より
その顔は普通の死人とはまるでちがって、緑青のように青く、髪がべっとりとくつついていた。—— 阿波の怪談(横山春陽・郷土怪談・民俗・1958年(昭和33年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
阿波の怪談(横山春陽・郷土怪談・民俗・1958年(昭和33年))
『阿波の怪談』は、横山春陽が昭和三十三年に編み、徳島新聞出版部から発行した郷土の怪談集である。徳島県の各地と土佐との国境の山中に伝わる山女郎、淵や池の主、カッパ、亡霊、火の玉、タヌキやキツネ、大ジャの話を、平安朝の言い伝えから藩政期、明治・大正、昭和の出来事まで、編者が古老に聞き、書物から拾って題ごとに並べる。おわりにでカッパやヘビの話の多い地域や海の話の少なさについて記す。