六角牛山で生きていた娘
どんな伝承か
上閉伊郡上郷村のある所に容貌の美しい娘がいたが、ある時急病で死に、村を挙げて悲しみ丁寧に葬式を済ませた。それから三年ほど経った秋、同村の狩人某が六角牛山という深山へ狩猟に行き、川内という深沢に迷い入って、岩石の重畳したガロに行き当たった。行く手を見ると、頭上の岩の上に一人の女が立って下を見下ろしている。よく見れば先年死んだはずの村のその娘であった。娘は泣いて、あの時は死んだように見せかけられて墓場から掘り起こされ、ここに攫われて来たのだと語り、夫は強く疑い深い男で、産んだ赤児をどこかへ持ち去ってしまうと言った。そして、他言すれば命はないと告げて姿を消した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年))
『怪談の世界』は、山田野理夫が昭和五十三年に著した怪談の研究随筆である。遠野での佐々木喜善と柳田国男の出会いから説き起こし、家・山・木・石・道・水・火に現れる妖怪、憑き物、鬼と天狗、生霊・死霊・幽霊の話を、著者の聞き書きや各地の民俗資料、古典・芝居から集め、沖縄の話で結ぶ。章立ては江馬務と柳田国男の妖怪分類を参考にしたもので、民俗学の資料と文学作品の両面から怪談をとらえようとしている。