板谷峠の茶屋で顔になったせいろ
どんな伝承か
福島から米沢へ抜ける板谷峠に、とろそばを名物とする茶屋が一軒あった。いつの頃からか峠に化け物が出るという噂が立ち、街道を行き来する者が減った。米沢の宮島某という侍がこのままには棄ておけぬと峠へ向かい、茶屋に立ち寄ってそばを所望した。親爺がせいろにそばを盛って出す。空になったせいろが突然飛び上がって親爺の顔に貼りつき、そのまま顔になった。すだれがぱくぱくと動いて口をきく。宮島某は少しも驚かず、峠がさびれるからここには出るなと諭した。後日、茶屋の使いが届けたせいろは、いくら食べてもそばがひとりでに出てきたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東北怪談の旅(山田野理夫・昭和49年(1974年)頃)
東北怪談の旅(山田野理夫)/飢饉の非業の死と怨念/巫女(イタコ)の口寄せ/座敷童子・河童の怪/東北各地の幽霊伝承