川で洗い合う死んだ二人の妻
どんな伝承か
羽州の矢野目村に、ミツという美しい娘がいて周助の嫁となり、同じ村のアキも劣らず美しく松吉の女房となった。ある年、流行病に罹ってミツもアキも死に、夫たちは嘆き悲しんだ。それから数年経って、二人は村の者たちと羽黒山へ参りに出かけ、その帰りの山道で迷ってしまう。水音を頼りに歩くと思ったとおり川岸に出た。川の中では二人の女が真裸で背中も腹も洗い合っており、まるで夫婦もののように見えた。顔を見て二人は驚いた。死んだミツとアキだったのである。名を呼ぶと、二人の女は抱き合ったまま笑って消えた。周助と松吉は家に戻ったが、数日後にどちらも死んだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東北怪談の旅(山田野理夫・1974年(昭和49年))
『東北怪談の旅』は、山田野理夫が昭和四十九年に編んだ東北地方の怪談集である。青森・秋田・岩手・宮城・山形・福島の六県に伝わる妖怪や幽霊の話、飢饉と間引にまつわる話、江戸時代の奇談などを、一番から一六三番までの短い話として収める。各話の末尾に県名を記し、恐山や飢饉の記録にふれて東北の怪談と怨念を結びつけるまえがきと、怪談観や霊能者をめぐる回想を記したあとがきを付す。