狐の嫁入りに雨を降らす小僧
どんな伝承か
上閉伊郡の仙人峠を、釜石から魚を運ぶ駄賃付けの馬がさしかかった。峠では狐が魚をもらうのを待っており、馬喰は三、四匹を投げてやった。狐は大声で、魚をやるぞ、魚をやるぞ、と言った。すると頭からすっぽりと濡れている小僧が跳び出してきた。狐は小僧に、魚をやるので雨を降らせてくれ、娘の嫁入りをするから、と頼んだ。小僧が承知したと言うと、あたりはたちまち暗くなり、手にした提灯を振ると雨が降りだした。その中を狐の嫁入りの行列が続いた。馬喰は峠越えを急いだが、不思議に足許だけは明るく、体は少しも濡れなかったそうである。古老は、あれは雨降り小僧さ、と言う。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東北怪談の旅(山田野理夫・1974年(昭和49年))
『東北怪談の旅』は、山田野理夫が昭和四十九年に編んだ東北地方の怪談集である。青森・秋田・岩手・宮城・山形・福島の六県に伝わる妖怪や幽霊の話、飢饉と間引にまつわる話、江戸時代の奇談などを、一番から一六三番までの短い話として収める。各話の末尾に県名を記し、恐山や飢饉の記録にふれて東北の怪談と怨念を結びつけるまえがきと、怪談観や霊能者をめぐる回想を記したあとがきを付す。