伐られまいとねじれた水無神社の檜
どんな伝承か
飛騨の高山在の宮村にある水無神社の社前には、幹の太さ八尺に及ぶ檜の老枯木があり、幹から根の端、枝の先までことごとくねじれていて、誰が見ても自然にねじれたとしか思えない。だが土地の言い伝えでは自然のものではない。明治より前、社の木の鳥居が古びたのでこの檜で建て替えることになり、いよいよ翌日伐るという晩の深夜、天地が裂けたかと思うほどの大音がばりばりと響いて村中が目を覚ました。翌朝行ってみると檜がねじれていたので、村人は神の怒りと知って震え上がり、すぐに詫びの祈祷を捧げ、鳥居は別の木で建て替えたという。
原典より
その夜の深更に、天地が張り裂けたかと思ふばかりの大きい音でバリ/\と鳴り響いたので村民が悉く目を覚ました。—— 幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談)
『幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵』は、岡田蒼溟による霊怪の事例集である。祟る石、出雲の瀧姫行者、神西湖の妖怪、但馬の抜け首、黄金の精、海の牛鬼、天狗などの怪異を、著者自身の見聞や知人の談話、古い文書からの移載によって集め、明治・大正期の出雲や松江周辺の事例を多く含む。項目によっては【解題】や註を添え、事例の後に「第二編」と附録の「天狗考」を続け、巻末の「解説の欄」で生霊・疫神・物体の飛来などを心霊研究の立場から論じる。