出家を引き留めた大蛇と鵲の夢
どんな伝承か
宗教史に見える合目的性幻覚の例として、京都栂尾の明恵上人(高弁)の話が引かれる。この人には生涯に夥しい幻覚の経験があった。十二、三歳の時、高尾を出ようと思うことがあり、父母が自分を薬師仏に参らせたのだから暇を申してから出ようと考え、八幡大菩薩にも暇を申した。するとある夜の夢に、すでに高尾を出て三日坂まで来たと思うと、大蛇が頭をもたげて追ってきて路をふさいだ。八幡大菩薩の使いだという。また三、四寸ばかりの鵲が飛来し、大菩薩の使いとして引き留めに来たと告げた。上人はその後、思いとどまったという。
原典より
或夜夢に、巳に高尾を出むと思ひて三日坂迄出たりと見れば、大蛇頭をささげて追ひ来て、路の前にふさがれり。—— 心霊学講義(変態心理学講義録)(小熊虎之助(述)・日本変態心理学会・心霊学・変態心理学) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊学講義(変態心理学講義録)(小熊虎之助(述)・日本変態心理学会・心霊学・変態心理学)
『心霊学講義(変態心理学講義録)』は、文学士小熊虎之助が述べ、東京の日本変態心理学会が出した心霊学の講義録である。心霊研究の態度と詐術の例から説き起こし、こっくりさんなどの自働現象、精神感応、交霊、透視と未来の予知、心霊物理現象、騒ぐ幽霊を、英国の心霊現象研究会の調査例や講者が盛岡で確かめた事例を引きながら心理学の立場から論じる。終章で長尾夫人や三田光一の念写を検討し、巻末に内外の参考書解説を付す。