牢湿を病んだ入牢人亀吉の容体書
どんな伝承か
陸奥守山領においても、牢中で病気になる者は少なくなかったようだ。牢内の湿気による病として「牢湿」という診断名を書いた容体書もみられる。安政四年の入牢人・亀吉も牢湿であったが、医師熊田道哉の書いたその容体書には、時どき寒熱が往来し、そのうえ腹中が切痛して下痢がある、折おりめまいがして両手が不自由である、食事もすすまず疲労してきている、と記されている。病気療養中は療治が行き届かないという医師の診断にもとづいて手鎖が許されることがあり、療養中は刑の執行を停止するこの制度は、御用留帳にしばしば記載が見える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
疫病と狐憑き-近世庶民の医療事情(昼田源四郎・昭和中期(推定))
本書は江戸時代の陸奥奥州守山藩領における『御用留帳』を史料とした、近世農村の医療事情と心霊現象の研究である。狐憑きや物付きなどの精神疾患が、祈禱や指籠入れ(座敷牢)によって治療された実例を14件詳述する。天明・天保の飢饉や流行疫病(疱瘡、麻疹、コレラ等)への対応と並行して、乱心者の社会的処遇、責任能力の鑑別問題、欠落(逃亡)との区別が論じられている。