帳外ゆえ在所から追い返された夫婦
どんな伝承か
天保五年、四十六歳の弥助と四十二歳の女房は、仙台領丸森へ百姓の日雇い稼ぎに来ていた。二月中旬に女房の持病である癥の痛みがひどくなったため、三月三日に三城目村へ向かって帰途についたが、痛みは強まる一方で歩けなくなり、弥助が背負って下手渡村まで来たところで安駄送りを願い出た。下手渡村は薬を用いて介抱し、送り状を添えて二人を三城目村まで継ぎ送った。ところが女は確かに三城目村の者ではあったが、十七年前に欠落したまま七年前に帳外となっており、夫は伊達郡茂庭村の者であった。村は当方と関わりのない者だとして、二人を送り返してしまった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
疫病と狐憑き-近世庶民の医療事情(昼田源四郎・昭和中期(推定))
本書は江戸時代の陸奥奥州守山藩領における『御用留帳』を史料とした、近世農村の医療事情と心霊現象の研究である。狐憑きや物付きなどの精神疾患が、祈禱や指籠入れ(座敷牢)によって治療された実例を14件詳述する。天明・天保の飢饉や流行疫病(疱瘡、麻疹、コレラ等)への対応と並行して、乱心者の社会的処遇、責任能力の鑑別問題、欠落(逃亡)との区別が論じられている。