宿を借りた翌朝に息絶えた伊勢参り
どんな伝承か
文政十二年四月三日の夕、守山町の役元へ一人の男が宿を借りたいと訪ねてきた。伊勢参りの途中で日が暮れて困っているという。会津領川沼郡舞台田村の伊兵衛、四十四歳と名のったが、年より老けて見えた。言葉に相違はなさそうだったので守山町の弥兵衛の家に泊めた。翌朝、六ツ半になっても起きてこないので弥兵衛が声をかけると、返事もなくただ苦しげにもだえている。奇応丸を飲ませて役元に注進し、医師の藤大瞭が呼ばれて積気と診て煎薬と気付けの灸を施したが、男は五ツ半ごろ息を引き取った。会津へ二度飛脚を出したが、該当者は人別にいないという返事だった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
疫病と狐憑き-近世庶民の医療事情(昼田源四郎・1985年(昭和60年))
『疫病と狐憑き-近世庶民の医療事情』は、精神科医の昼田源四郎が昭和六十年に著した、江戸時代の村の医療を描く本である。奥州守山領(現・福島県郡山市の一部)の『御用留帳』を主な史料に、村人の暮らし、医師と医道修行、疫病と祈禱、湯治、乱心と狐憑き、受刑者の治療、行倒れの継ぎ送り、間引きと養育手当などを、書き下した原文を引いて跡づける。序と凡例、全八章、あとがき、注、索引からなり、発行所はみすず書房である。