湯の川に倒れていた名も知れぬ男
どんな伝承か
宝暦八年、守山領岩作村から、湯の川に倒れている者があるとの注進があった。役人が出張って検視したところ、五十歳ばかりの男で、在所も名前も分からなかった。行き倒れの者が死んでいて在所が知れない場合は、享保十八年の触れにしたがい、その場に三日晒し置いたうえで様子を書き付けた札を立て、土葬にして支配の役所へ届けることになっていた。守山領でもおおむねこの触れのとおりに処理されたようで、身元不明のまま捨札を立てて埋められた例がいくつも帳面に残っている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
疫病と狐憑き-近世庶民の医療事情(昼田源四郎・1985年(昭和60年))
『疫病と狐憑き-近世庶民の医療事情』は、精神科医の昼田源四郎が昭和六十年に著した、江戸時代の村の医療を描く本である。奥州守山領(現・福島県郡山市の一部)の『御用留帳』を主な史料に、村人の暮らし、医師と医道修行、疫病と祈禱、湯治、乱心と狐憑き、受刑者の治療、行倒れの継ぎ送り、間引きと養育手当などを、書き下した原文を引いて跡づける。序と凡例、全八章、あとがき、注、索引からなり、発行所はみすず書房である。