宿を断られ馬屋で死んだ伊勢参り
どんな伝承か
明和六年、二本松領久保田村の喜三郎という六十八歳の男が、伊勢参りの途中で守山領根木屋村を通りかかり、腹が痛むので泊めてほしいと頼んだ。村では、旅人を泊めることは禁じられていると言って断った。翌朝、村の馬屋のなかで喜三郎が死んでいるのが見つかった。村から在所へ連絡すると親類の者が来たので、一札を取って遺体を引き渡している。行き倒れの旅人があれば、まず発見地の者が医師に掛けて療治を加えることが幕府の触れで義務づけられていたが、宿を断られたこの男には、その手当ても間に合わなかった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
疫病と狐憑き-近世庶民の医療事情(昼田源四郎・昭和中期(推定))
本書は江戸時代の陸奥奥州守山藩領における『御用留帳』を史料とした、近世農村の医療事情と心霊現象の研究である。狐憑きや物付きなどの精神疾患が、祈禱や指籠入れ(座敷牢)によって治療された実例を14件詳述する。天明・天保の飢饉や流行疫病(疱瘡、麻疹、コレラ等)への対応と並行して、乱心者の社会的処遇、責任能力の鑑別問題、欠落(逃亡)との区別が論じられている。