小川村で行倒れ死した乞食体の老人
どんな伝承か
寛政七年の夕刻、守山領小川村で、老婆が道に倒れている男を見つけて驚き、村役人に注進した。男はすでに息絶えていた。年のころ六十余、身なりは乞食体で、在所も名も分からない。役人が出向いて検視をおこない、外傷はなく行き倒れに相違ないことを確かめたうえで、立札を立てて村内に埋葬した。守山領では在所の知れぬ行き倒れ人について、三日ほど晒し置き、様子を書き付けた札を立てて土葬するという触れが出ており、この一件もその作法どおりに処理されている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
疫病と狐憑き-近世庶民の医療事情(昼田源四郎・1985年(昭和60年))
『疫病と狐憑き-近世庶民の医療事情』は、精神科医の昼田源四郎が昭和六十年に著した、江戸時代の村の医療を描く本である。奥州守山領(現・福島県郡山市の一部)の『御用留帳』を主な史料に、村人の暮らし、医師と医道修行、疫病と祈禱、湯治、乱心と狐憑き、受刑者の治療、行倒れの継ぎ送り、間引きと養育手当などを、書き下した原文を引いて跡づける。序と凡例、全八章、あとがき、注、索引からなり、発行所はみすず書房である。