血みどろの老人が座る終電の幽霊電車
どんな伝承か
語り手が初めて東京へ来たのは明治三十四年の春で、下谷車坂の大石という邸に世話になった。そこには七十ばかりの老婆がいて、よく化け物や幽霊の話をしてくれた。その一つに幽霊電車の話がある。ある高利貸が終電車の中で殺されたので、それ以来その車台が終電車となって下谷の車庫に入る巡り合わせになると、必ず血みどろの老人が車の隅に悄然と腰かけている。電車会社でも気味悪がって、とうとうその幽霊車台を焼き捨てたという。語り手は終電に乗り合わせるとじっとしていられず、途中で降りて歩き出したこともあったと記す。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
私は幽霊を見た(東雅夫(編)・MF文庫ダ・ヴィンチ)
『私は幽霊を見た――現代怪談実話傑作選』は、東雅夫が編んだ怪談実話のアンソロジーで、メディアファクトリーのMF文庫ダ・ヴィンチの一冊である。平山蘆江・火野葦平・佐藤春夫・徳川夢声・遠藤周作・柴田錬三郎から石原慎太郎・新倉イワオ・稲川淳二まで、作家や文化人が自ら見聞きした幽霊や怪異を書いた文章を集める。目次には二十三篇と編者解説が並び、水木しげる・山田野理夫・桝井寿郎の座談「怪談詮議」や中岡俊哉「イタコの謎を追う」の抄録も含む。