額から伸びる細い糸で体とつながる幽体離脱
どんな伝承か
昭和四十四年ごろ、何度目かの危篤で病院へ運ばれ、個室に寝かされた書き手自身の体験である。気づくと自分は宙にふわりと浮かび、ベッドに横たわる自分を頭の斜め上から見下ろしていた。浮いている自分と寝ている体とは、額の真ん中あたりから伸びるクモの糸ほどの細い糸で結ばれていた。体のほうは目を開けることも指先ひとつ動かすこともできないが、苦しさはまるでなく、心も体も水の底のように静まり返っていた。誰かがその糸をふっと横切ったら、それで命は終わっていただろうと書き手は記している。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。