河の向こうから手招きする死者
どんな伝承か
佐藤義則が書き留めた話である。某爺はすごく元気な人であったが、若いころ裸馬を走らせて背から振り落とされ、あっけなく死んだことがあるそうな。だが一日ほどしてから生き返って語るには、大きな流れの早い河の向こうに顔見知りの人たちが立ち並んで、某やあ、お前も来たのかあと叫び、手に手に来い来いの手招きをするのであった。そのうち叔父が前に来て、まだお前の来る所でないぞえときつく叫んで恐い顔で睨んだ。行こうか戻ろうか迷っているところに後ろから名を呼ぶ大声がして、はっと振り返った途端に息を吹き返した。夢に見た人々は皆近年に亡くなった人で、着物の様子まで言い当てたという。爺はその後二十年も長生きした。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。