酒飲み競べで閻魔と組み合った倅
どんな伝承か
五箇のおり婆さんが死んで生き返ってから八年たったときのことである。二十五歳になった倅が、若い衆の寄り合いで酒飲み競べをして倒れた。七転八倒の苦悶が続き、仲間が酒を飲ませたり介抱したりしても、大力でとても抑えきれない。やがて鎮まると、倅は夢うつつのうちに、お前は俺の母親か、俺もそっちさ行ぐぞい、白い着物でないとだめか、などとつぶやいた。醒めたのち仲間に語るには、花の咲く山道を行くと川原に出て、閻魔と力いっぱい組み合ったがかなわず降参した。川の向こう側で石積みをする母親や兄や叔父が見え、その着物では戻れと押し返された。母は馬鹿酒を慎めと戒め、叔父は体が小さくて相撲取りになれなかったのが心残りだと言ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。