臨終の父が口にした亡き母
どんな伝承か
吉城郡国府町瓜巣の話。七年前、話者の父が亡くなった。三日ほど口もきかず眠ったまま死んでいったが、死ぬ前日か前々日に、ろれつの回らない口でしきりに母のことを言った。母は二十年ほど前に亡くなっている。話者は母が迎えに来たのだと思ったが、念のため妻に「お前に用ではないか確かめてみよ」と言わせた。妻が父に何か用かと尋ねると、父はお前ではない、というしぐさをした。それきり一言も口をきかず父は死んだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。