真冬の座敷に舞い込んだ白い鳩
どんな伝承か
昭和十六年頃のことである。旧暦の正月で、外は屋根まで雪が積もっていた。語り手は祖父と父と母の四人で真ん中の座敷に寝ていたが、そこへ突然、真っ白い大きな鳩が飛んで来た。父がつかまえろと言い、語り手と母が箒を持って追いかけた。鳩は座敷のあちこちを飛びまわり、逃げないように戸を閉めろと騒いでいるうちに、煙出しから逃げていってしまった。ところが不思議なことに、その鳩は一緒に寝ていた祖父には見えなかったという。祖父はそれを聞くと、兄っつあんが死んだのではないかと言い、行ってみると、やはり祖父の兄が死んでいた。父が家督息子なので、祖父の兄の魂が鳩になって父のところへ来たのだろうということになった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。