口寄せで知る姉の懐への訪れ
どんな伝承か
明治のころ、五箇の敏あんにゃは、婚家の姉が病篤いというので若松まで町医者を頼みに出かけた。折悪しく医者は重病人の往診で不在だったため、明日まで待つことにして町に泊まった。寝つかれずうとうとしていると、女の人が入ってきてスーッと懐へはいり、急に寒気がした。峠を八里も越えた疲れがたまったのだと思った。翌朝、医者を伴って姉の婚家に着いてみると、姉は医者を待ちきれずに死んでいた。葬式の晩、わかさまに口寄せを頼むと新仏が出て、「山越えの医者たのみ、ごくろうだった。そなたの懐まで逢いに行ったのがわかったか」と語った。町で寒気を覚えたのは、ちょうど姉の死んだ時刻であった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。