二度の呼び声と隣寺の住職の死
どんな伝承か
大正十一年春のことである。祖父と二人で留守番をしていた午後八時頃、玄関で、今晩は、今晩は、という呼び声がした。誰か来たようだから出てみろと祖父に言われ、戸を開けてみたが誰もいなかった。少しするとまた、今晩は、と声がする。祖父と二人で出てみたが、やはり誰の姿も見えない。変なこともあるものだと話していた。翌日、隣にある寺の住職が死んだと聞き、さてはあれは別れを告げに来たのかと、皆で話し合ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。