切れた数珠と渡し舟の転覆
どんな伝承か
昭和十三年七月十三日の朝、城島町浮島の家での話。信心深い父は家族全員に数珠を持たせ、朝夕仏壇を拝ませていた。その朝、兄の松次が拝んでいると、手に掛けた数珠の糸が切れて玉が膝に散った。その日は日支事変一周年の記念日で、兄は消防組員として青木小学校の式典に出るため急いでおり、後ろにいた話者に修理を頼んで出かけた。話者は不吉な予感を覚えつつ玉を丈夫な紐に通して仏壇に供えたが、式典の帰りに兄らの乗った渡し舟が転覆し、四人が亡くなった。泳ぎの達者な兄が戻らなかったのが今も不思議だという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。