湯花採りが見た友の女房
どんな伝承か
祖父が田名部町の柳町の中井という人から聞いた話。中井はお山(恐山)の湯花を採る人夫として雇われていた。ある晩、床に入ってうとうとしていると、誰かが盆踊りの歌をうたいながら通りかかる。戸を開けると友達の女房で、その女は寺の中へずんずん入っていった。翌朝、挨拶しようと寺へ行き「ゆうべ、女の人が来たでしょう」と尋ねると「だれも来ない」と言う。坊さんは「度々あります」と笑った。一週間ほどして町に下り友達の家を訪ねると、女房は一週間前に死んだという。姿を見たのは死んだ日の晩であった。中井はまた、お山に登る途中で知人が傘をさして歩くのを見、走っても追いつけず、その男は寺へ入って消えたとも語った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。