保福寺へ通う合羽姿の遭難者
どんな伝承か
尾浦の鈴木さんの家の大きな船が沈んだ。八月か九月の台風の頃だったという。尾浦の部落からも竹ノ浦の部落からも何人かずつ乗っており、働きざかりの父親たちが死んだ。遭難から一か月ほど経った頃、ある人が保福寺のところへ用があって行くと、雨も降っていないのにピチャピチャと音がする。向こうからザックザックと歩いてくる人たちがいて、黒いゴムの合羽を着て雨の中を歩いているように見えた。その人たちが通り過ぎるときだけ雨が降っている感じがしたという。保福寺は尾浦にあり、桐ヶ崎も竹ノ浦も御前も、人が亡くなればみなここへ来る寺であった。遭難した人たちが寺へ帰って来たのだろうと語られている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。