墓へ行こうと誘いに来る病人たち
どんな伝承か
ある年、ある村に伝染病があった。方々の家に病人が出来て、頻々と人が死んだ。その時に、やはりその病気にかかった人の話に、自分は床の中にいて、その村で病気にかかっている人の誰が今日は死ぬ、誰々が今日は死ぬと、ちゃんと分かったという。その人の話を聞くと、その病人たちが来ては、しきりに裏の山にある墓へ行こうと誘うのだそうである。だがその人はどうしても行きたくないので断った。互いに誘われて行く人や断る人があったが、行った人は皆死んだそうである。ある一人などはすぐ隣の娘だったが、来てそれは一心に誘い、断るとさめざめと泣いて別れて行き、次の日にはその娘は死んでいた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。