湯の窓を通る妻と逢魔が時
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どんな伝承か
恐山は死者や亡者にまつわる話で満ちている。せめて一目なりとも昔のままの姿を眺めたいと願って寺に詣る者も少なくない。五つの湯の窓で、そう念じて見た人もあった。湯の煙は黄昏頃から強く立ち上り、この頃が逢魔が時で、窓を見つめていると、逢いたいと思う人があの世から来て窓を通り、地蔵堂のほうへ行くという。ただしここでは決して言葉をかけてはならない。陸中の在から来た中年の男が、亡くなった妻を思いながら冷の湯に浸っていると、窓の外を妻が通っていく。思わず名を呼ぶと、妻は踵を返して窓に近づき、形容できぬほど恐ろしい目で男を睨んだ。男は下山後もその両眼を忘れられず、ぶらぶら病となって間もなく死んだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。
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