建前の日に井戸で見つかった嫁
どんな伝承か
大楠山の近くにあることから大楠の家と呼ばれる親戚の家が、二十年ほど前に建て替えられた。建前を前にして、普請にあたっていた隣家の大工の嫁が姿を消し、身内だけで探しても見つからない。当日、神社がないので寺の法印を招いて祓ってもらうと、法印は見当違いの方を向いて経を唱え、赤子を背負い絣を着た女が立っていたので祓っておいた、と手伝いの老女に耳打ちした。やがて出された茶に髪の毛が沈んでいるのが見つかり、大工が井戸の蓋を開けると、子を背負った嫁が浮いていた。蓋が十センチほどしか開いておらず、最初の捜索では見落とされていたのだという。姑にいじめられての死だと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。