建前の日に井戸で見つかった嫁
どんな伝承か
大楠山の近くにあることから大楠の家と呼ばれる親戚の家が、二十年ほど前に建て替えられた。建前を前にして、普請にあたっていた隣家の大工の嫁が姿を消し、身内だけで探しても見つからない。当日、神社がないので寺の法印を招いて祓ってもらうと、法印は見当違いの方を向いて経を唱え、赤子を背負い絣を着た女が立っていたので祓っておいた、と手伝いの老女に耳打ちした。やがて出された茶に髪の毛が沈んでいるのが見つかり、大工が井戸の蓋を開けると、子を背負った嫁が浮いていた。蓋が十センチほどしか開いておらず、最初の捜索では見落とされていたのだという。姑にいじめられての死だと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。