宮前平の信号待ちで聞いた赤子の泣き声
どんな伝承か
神奈川県川崎市宮前区での話。語り手が高校生の頃、オートバイ仲間と夜に走りに出ることをよくやっていた。十数年前の宮前平はちょっとした小山のような所で、右側に大きな壁が続いていた。夜中の一時過ぎ、十台ほどの仲間と真っ暗な中で信号待ちをしていると、何十人もの赤ん坊の泣き声が聞こえた。「ここは産婦人科の病院かね」と言うと友人は怪訝な顔をし、次の瞬間赤信号を無視して走り出した。宮前平の駅近くのレストランで問うと「あそこ、水子地蔵の寺だよ」と言われた。その声は語り手以外の誰にも聞こえていなかった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。