唇に止まる草色の虫となった母
どんな伝承か
栃木県宇都宮市の話者小倉嘉子さんの母は昭和五十六年、甲状腺ガンの手術で気管切開し、言葉を失った。三日で筆談を身につけ、意思疎通を保った。母が亡くなる三日前、疲れて眠ろうとすると唇の上に草色の虫がとまる不思議な体験が続いた。母の死後、通夜の祭壇にも同じ虫が現れ、家族は「おばあちゃまらしい」と語り合った。息子が草むらに放したはずの虫は、後日ミイラの姿で同じ場所に見つかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。