窓の格子から家を覗く亡夫
どんな伝承か
戦争前の話だという。平井先生の伯母は、合浦公園の向こう側にあたる造道に住んでいた。伯母の夫が亡くなって幾日か経った夜、隣家の人が用を足して小路を歩いて戻ってくると、道に一人の男が立ち、伯母の家の窓の格子に顔を押しつけて中をじっと覗き込んでいた。家の中の電灯に照らされたその横顔は、何日か前に死んで埋葬されたはずの、その家の主人にほかならなかった。小さな子を残して逝ったのだから、気がかりで様子を見に来ていたのだろうと、人々は語り合ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。