チンタツサセニコイの電報騒ぎ
どんな伝承か
高知県高知市での話。朝鮮南部の要港・鎮南浦と軍港佐世保をめぐる出来事である。新婚間もなく夫が召集されて三月ほど経ったある日、若妻のもとに『チンタツサセニコイ』という電報が届いた。妻はみるみる真っ赤になり『人にも見られるのに恥ずかしい』と怒りながらも支度を始めると、続いて『チンタタズサセニクナ』と届く。困って父に相談すると、父の打った電文は『鎮南津も発たぬも佐世に行く』と怒った文であった。簡略にしすぎた電文が思わぬ誤解を招いた笑い話である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸)
『現代民話考 ― 軍隊』は、松谷みよ子が編んだ、軍隊と戦争をめぐる現代の民話の集成である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きによって寄せられた話をもとに、十五年戦争を中心に徴兵検査から新兵のしごき、戦地、虐殺や飢え、敗戦、収容所、戦犯、軍隊生活の怪談までを収める。巻頭に序文「明日の民話のために」と論考「軍隊考」を置き、十三の部に分けた各話の末に話者と回答者の名と在住地を記す。