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怨念無しと極難き事

所在地東京都江東区深川仲町
登場根岸鎮衛、佐助、著者、語り手、亡霊を見た聖堂の儒生
出典耳嚢(みみぶくろ)

どんな伝承か

聖堂で学んだ佐助という儒生が、若いころ深川へ講釈に出かけた帰り、日が暮れたので仲町の茶屋に泊まり遊女を呼んで遊んだ。夜更け、階下で念仏の声がし、階段を上る足音とともに障子の外を何かが通った。隙間からのぞくと、髪を振り乱し両手を血に染めた女が通り過ぎ、佐助は夜具をかぶって震えた。遊女の話では、この家の主はかつて夜発の親方で、病身の夜発をたびたび折檻していたが、かばう女房に脇差で斬りかかった時、夜発が刃を素手でつかんで指をすべて切り落とされ、その傷がもとで死んだという。その亡霊が夜ごと現れるので客足も遠のいているといい、まもなくその茶屋は跡形もなくなったという。

原典より

頻りに怖しく成て、障子の透間より覗きければ、髪ふり乱したる女の両手血に染みて通りけるが、…—— 耳嚢(みみぶくろ)(根岸鎮衛・江戸随筆・怪異・1809年(文化6年)) より引用
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※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません

出典の文献について

耳嚢(みみぶくろ)(根岸鎮衛・江戸随筆・怪異・1809年(文化6年))

『耳嚢(みみぶくろ)』は、根岸鎮衛(守信)が勤めの合間に古老や訪ねて来た人から聞いた話を書き留め、佐渡在勤のころからまとめ直して文化六年仲秋に結びを付した随筆である。武家・町人の逸話や奇談に加え、狐・狸・幽霊・妖獣などの怪異、羽蟻や虫歯・ものもらいを治めるまじない、薬の秘法を、一項ずつ題を掲げて記す。この本文は著者の自叙と巻之一から巻之十まで(巻之四を欠く)の抜粋で、巻末に著者の結びと『耳嚢副言』の一部を置く。

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