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恩愛奇怪の事

所在地東京都千代田区
年代寛政期(江戸後期)
登場根岸鎮衛、著者、語り手
出典耳嚢(みみぶくろ)

どんな伝承か

神田明神の前からお茶の水へ抜けるあたりの船宿に、文化三年で六歳になる娘がいた。二、三歳のころから大人のように筆を使って字を書き、両親はたいそうかわいがった。やがて一家は船宿をたたんで両国あたりへ移り、娘の筆跡はますます評判になった。ところが文化三年に流行した疱瘡にかかり、看病のかいもなく亡くなった。嘆き悲しむ母に、娘は心配しないで、神田へ行ってまた会いましょうと言い残したという。そのころ神田の知人の家で、娘と同じころ身ごもった妻が男の子を産んだが、その子は生まれつき手に字のような墨の跡があった。知人が両国まで見せに来ると、母はわが娘の生まれ変わりだと喜んだという。

原典より

彼娘二、三才の時より筆とりて物を書く事成人のもの如く、父母の寵愛大方ならず。—— 耳嚢(みみぶくろ)(根岸鎮衛・江戸随筆・怪異・1809年(文化6年)) より引用
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※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません

出典の文献について

耳嚢(みみぶくろ)(根岸鎮衛・江戸随筆・怪異・1809年(文化6年))

『耳嚢(みみぶくろ)』は、根岸鎮衛(守信)が勤めの合間に古老や訪ねて来た人から聞いた話を書き留め、佐渡在勤のころからまとめ直して文化六年仲秋に結びを付した随筆である。武家・町人の逸話や奇談に加え、狐・狸・幽霊・妖獣などの怪異、羽蟻や虫歯・ものもらいを治めるまじない、薬の秘法を、一項ずつ題を掲げて記す。この本文は著者の自叙と巻之一から巻之十まで(巻之四を欠く)の抜粋で、巻末に著者の結びと『耳嚢副言』の一部を置く。

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