犬神を騙った阿波の古狸
どんな伝承か
四国には狐がいないため犬神が跋扈するとの言い伝えから、土佐藩は稲荷の神職・久武山城に悪霊退散を命じた。山城は植田村の神主武田豊後、大井出雲、岩原村の岡崎長門、西村若狭ら五名で、氏神の社殿で二月二日から三日間祈祷を行った。乱心者は六十四人に達し、境内に集まって罵り騒いだ。山城が大将株らしき者を捕らえて問答すると、相手は『犬神をダシに使っているだけで、実は阿波国祖父山の内、国政村梅の宮に千年住む古狸だ』と白状したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
二つの怪奇な心霊現象(浅野和三郎・1940年(昭和15年))
『二つの怪奇な心霊現象』は、浅野和三郎が著し、心霊科学研究会が昭和十五年に発行した心霊現象の記録で、昭和二十七年に再版された。前篇は土佐国長岡郡豊永郷岩原村で村人数十人が憑きものに狂乱し、藩の役人が祈禱や鉄砲で鎮めた事件を、嘉永六年に野島通玄が記した記録から紹介する。後篇は山梨県北巨摩郡穂坂村の旧家の娘かね代に先祖横森市兵衛の霊が懸かり、盗まれた不動明王の掛軸が戻った因縁を、著者の調査と甲州訪問記を添えて述べる。