風紀の件で多古の警察に呼ばれたけい
どんな伝承か
熊が五木田の家で出獄祝いの酒を飲んでいたころ、熊の知らないうちに、けいは多古の警察へ呼ばれ、風紀上のことで取り調べを受けていた。けいは自分の非をすべて認めて詫びたが、相手の男の名だけは口をつぐんで明かさなかった。留め置かれても仕方のないところだったが、警察は女の身の上に同情して家へ帰した。これより先、熊は六月二十五日の夜の乱暴が警察に知れた訳を仲間に探らせ、菅澤種雄が女に勧めて訴えさせたのだと聞かされて、女と種雄をひどく恨んでいた。だが実際に告発したのは、駐在の向後巡査だったのである。
原典より
仲間は菅澤種雄が女に勧めて告訴さしたものだと云った。—— 奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集)
『奇談全集 現代篇』は、田中貢太郎が幕末から大正にかけての事件や奇談を読み物に仕立てた作品集である。明治十一年に相模の真土村で起きた松木騒動、大正十五年に千葉の久賀村一帯で起きた鬼熊の事件、香取郡の連続殺人、伊賀上野の破獄、京都の天誅などを、記録や関係者の話をもとに描き、松木騒動には筆者が大正六年に現地を訪ねた補遺を付す。播磨屋橋遺聞のように、筆者自身が創作と断る話も含む。