鷲(嬰児殺しと山伏の巧智)
どんな伝承か
著者が十二三歳の頃、村の北の山麓にある清導寺の住職は法力がないと噂され、本堂に黒い牛のようなものが出る、山に天狗がいるなどと言われていた。近くの畑の上を鷲が飛んでいたという噂の数日後、寺の嬰児が野雪隠に落ちて死に、おしめが庭の梅の枝に掛かっていたことから、鷲に掴まれたとされた。後日、畳屋の座敷を借りて祈禱していた総髪の山伏が、村の巡査堀内と格闘の末に縛られて連行された。二十年後に古老に尋ねると、山伏が寺を乗っ取ろうとして子を殺したのだと教えられた。
原典より
「あれは、山伏が寺を乗取るつもりで、小供を殺したものだよ」—— 日本の怪談(二)(田中貢太郎・日本の怪談シリーズ) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(二)(田中貢太郎・日本の怪談シリーズ)
『日本の怪談(二)』は、田中貢太郎が書いた怪談・奇談の短編集である。著者が「私の村」と呼ぶ土佐の海村の迷信を語る「鷲」のほか、高岡郡や長岡郡、野根山など土佐の話を多く含み、越中の放生津や立山、銚子の利根川口、京の寺町、摂津の味泥、館林の城下、江戸の碑文谷などを舞台に、蟹や蛇の怪、鮭の祟り、山姑、亡者宿、切支丹の妖術を物語の形で書く。「蟹の怪」から「鶏物語」まで二十八篇を収め、友人や土地の人から聞いた話として語る篇もある。