犬神持ちの家とよりの祈祷
どんな伝承か
著者の村では、狸のほかに犬神というものが人に憑いた。犬神持ちと言われる家があり、その家の者が隣家の蚕の出来や漬物の色を羨むと、犬神がすぐにその蚕や漬物に憑いて出来を悪くしたり、隣家の人に憑いて病人にしたりした。祓うには修験者のような祈祷者が、よりと呼ばれる女を病人の傍に座らせて幣を持たせ、祈祷を進めると、よりの手が震え出して犬神が乗り移る。問い詰められたよりは、犬神の出どころや憑いた訳を白状した。握り飯や漬物を門口まで届けよとねだる者もいた。今はそんなことを言う人もいなくなったが、つい最近まで犬神持ちの家とは縁組をしなかったという。
原典より
祈禱が進んで来るに従って、よりの幣を持った手が顫い出す。—— 日本の怪談(田中貢太郎・河出文庫・1985年(昭和60年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(田中貢太郎・河出文庫・1985年(昭和60年))
『日本の怪談』は、田中貢太郎の怪談を昭和四十五年桃源社刊『日本怪談全集』から抜き出した文庫本で、昭和六十年十二月に河出書房新社から発行された。「宝蔵の短刀」「八人みさきの話」など土佐の城下や村の話をはじめ、江戸・京・吉野などを舞台にした幽霊・狐狸・猿・魔物の話を、会話の多い語り口で収める。二十七篇の後に尾崎秀樹の解説を付し、高知に生まれた作者の生涯と怪談・妖異譚への傾倒をたどっている。