醤油屋殺しの跡で寝かされた小僧の放火
どんな伝承か
昭和九年の夏、千住の醤油屋殺しで有名な足立区橋戸町七十八番地の家は改修され、島という映写機玩具の製造をする男が住んでいた。店が忙しいのでもう一人小廝を置いた。それは隅田川の船で暮らす船頭の児で、小村進、十三であった。進は二階の物置のような室に寝ることになったが、翌日、年上の朋輩留五郎から「おめえの寝てるところは、醤油屋の小廝のやられた処なんだぜ」と脅された。その晩、二階で唸り声がして何かが起き上がり進は腰を抜かしたが、留五郎の脅かしであった。以後怖くて眠れず、家が焼ければ帰れると思い詰めて工場の裏手と隅に二度放火し、いずれも主人に見つかって千住署に検挙された。
原典より
* 妖怪屋敷 (318)* 自然と鳴る太鼓 (319)* 線香の匂い (321)* 雨乞祭の怪 (323)* 蛇の兜 (324)* 龍神 (325)* 四国遍路の奇蹟 (326)* 如来像…—— 日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。