家運を挽回した蛇の兜
どんな伝承か
昔から蛇の角、すなわち蛇の兜を拾えば家が繁昌するといわれる。昭和十二年、その蛇の兜が弘前市元寺町の斎藤吉六翁方に秘蔵されていると同地の新聞が報じ、不可思議な話題を提供した。一寸四方ほどの黒い光沢のある物で、同家に伝わる記録によれば、当主の祖父石戸谷貞蔵が天保年間に津軽藩の筒持役として城の警備勤務中、城内で発見したものだという。貞蔵の妹俊が市内浜の町の中谷家へ嫁ぐ際に持参すると、傾きかけていた同家の家運が挽回した。のちに俊の生んだ吉六翁が取り戻して以来、商売が急に繁昌した。不漁続きの西津軽郡鰺ヶ沢町の渋谷某が借りて神殿に安置すると大漁が続いたという。
原典より
* 龍神 (325)* 四国遍路の奇蹟 (326)* 如来像の怒り (328)* 屋根の仏像 (330)* 七福神の像 (331)* 弘法大師の像 (332)* 釈迦像を砕く男 (333)*…—— 日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。