割られた釈迦像と眠れぬ盗人
どんな伝承か
昭和四年五月、中野町本郷で半鐘が盗まれ、古道具屋の店先から見つかったことで、前科者の春野良造と依田健次が捕まった。ところが二人は留置場で毎晩うなされる。不審に思った署が厳しく調べると、その月の六日の夜、府下千歳村烏山の小住院の本堂に忍び込み、青銅の釈迦像に綱と丸太を掛けて担ぎ出し、裏の山中で石に叩きつけて割り、破片を売りさばいていたと白状した。指し示された場所を掘ると首や手足が現れ、住職は気を失わんばかりに驚いて洗い清めた。二人は白状してからは、ぐっすり眠れるようになったという。
原典より
* 山の神の怒り (334)* 怪火を見た経験 (336)* 帽子のない水兵 (337)* 狸の信号提灯 (338)* 妖女の舞踏する踏切 (340)* 怪火に浮ぶ白衣の男 (341)* 隧道…—— 日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。