墓地の前で下りた男の霊
どんな伝承か
ふみちゃんの家に男の霊が出なくなった頃、真夏なのに一日中寒くて体が重いという親戚のおばさんがいた。東京の世田谷に住むこのおばさんは、ふみちゃんの家に立ち寄った日、駅を降りて家へ帰る途中もすれ違う人が振り返るほど様子がおかしかった。ところが途中の墓地の前まで歩いてくると、急に体が軽くなり、汗がふき出したという。その墓地には、小田原で交通事故死し久野霊園に葬られた、以前は世田谷に住んでいた男の新しい墓があった。男を背負って墓地に置いてきたらしいと噂された。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
奇譚草子(夢枕獏)
『奇譚草子』は、夢枕獏が著した怪異譚集である。ここに収めるのは表題の部にあたる「〜の話」と題した短い話二十篇で、友人や知人が自分や身近な人の体験として語った生霊の手、階下で蹴ったばかりなのに二階に座っていた祖母、トンネルや雪山の死体、夜ごと来る小人などの話を、著者が聞き手として書き留める。各話は一つの出来事を短く語る小品で、末尾は箱根に住んだ元関取に憑いてスサノオと名告る存在の話で結ばれる。