長尾郁子の病死
どんな伝承か
長尾郁子の念写実験に立ち会った物理学者グループは、乾板を取枠に入れ忘れるという弁明しようもない手落ちを犯した。同行の三浦恒助は、念写を否定しようと記者たちにトリックだと触れ回り、藤原咲平と藤教篤は、このただ一度の失敗した実験をもとに『千里眼実験録』を発表した。東京朝日新聞の渡辺鶴峰記者は、山川健次郎の態度を「学者連の排他思想の紛乱だ」と批判した。実験のあと、郁子は心晴れず悶々とした日を送るうち、インフルエンザにかかり、その年の三月二十六日に亡くなった。御船千鶴子が一月二十八日に世を去っており、まるでその後を追うような死であった。こうして念写の真相を確かめる道は絶たれてしまった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊と神秘世界(福来友吉・1932年(昭和7年))
『心霊と神秘世界』は、文学博士福来友吉が著し、昭和七年に人文書院から発行された心霊研究と仏教思想の書である。御船千鶴子・長尾夫人・三田光一らの透視と念写をはじめ、霊の幻化、念動、物質化など国内外の心霊現象を実験記録とともに論じ、後半では自我・神秘世界・霊と生命を真言密教や華厳の教えによって説く。全五編からなり、この本文は昭和五十七年に心交社が出した復刻版で、梅原正紀・井村宏次らの「解説研究編」を付している。