お岩と名乗る霊に怯えた一高生
どんな伝承か
十数年前、第一高等学校に通う十九歳の青年が、勉強のしすぎから重い神経衰弱にかかった。暗がりを極度に恐れ、夜は一人で外出も就寝もできず、付添人が先に眠ることさえ許さなかった。夜半にうなされて目覚めても、何を見たかは覚えていない。催眠術による治療を頼まれた福来友吉が施術すると、青年は暗い部屋に片目の巨大な顔が現れ、青や赤に色を変えながら近づいてくる夢を語った。暗示で呼び出した霊は「お岩」と名乗り、百年も前からいる死霊だと答えた。のちに両親の話から、五、六歳のころ兄がお岩の面をかぶって弟を脅し、逃げようとした弟が転んで気絶した一件が判明した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
観念は生物なり(福来友吉・心霊・念写研究)
『観念は生物なり』は、福来友吉が著した心理学と心霊研究の論集である。観念と身体の関係、潜在精神と病気、夢、プランセット(自動書記)、狐憑病の伝染や尼寺のヒステリー、宮本武蔵の剣道などを論じ、明治四十三年以来十年間に接した御船千鶴子・長尾郁子・三田光一ら八人の通力者の透視と念写の実験を報告する。「観念と身体この関係」から「生命学と心霊研究」までの十四篇を収める。