雲に乗り魂だけで仙境へ通う幸安
どんな伝承か
参沢宗哲が、神仙の幽境へはどんな術で行くのかと問うと、幸安はこう答えた。いつも暗い夜か明け方に仙人の側から指図があって行くもので、だいたい一と六のつく日に参る定めであり、自分から行きたいと思って行く術はない。山人に伴われて雲に昇り空を行くと、わずかの間に仙境に着く。その時は自分の体も持ち物もみな人の目には見えなくなる。また、体は家で寝たまま魂だけが抜け出て行くこともあるという。そのとき体は死んだようになるのかと重ねて問われると、深く眠り込んでどれほど揺り起こされても起きないが、息はしていて生きているのだと答えた。
原典より
深く寝入りて何程ゆすり起さるとも起き不申候、然れども呼吸有りて生きたる也。—— 近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。